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藍民芸館

「幻灯」

2010年9月号

月刊「藍民芸館」

  7月17日(土)〜来月8月22日(日)の夏の特別展 『明治・大正 懐かしの幻灯』では 開館以来、初めて幻灯を取り上げ、明治・大正時代の貴重な版を多数展示いたしました。

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それに因み コレクター松田政秀が幻灯について書いたものを原文のまま、7・8・9月に分けてご紹介いたします。

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        「明治幻燈漫筆」後編    松田政秀

 

 昭和の初年、故吉田正太郎さん(黒船館・コレクター)から二枚折屏風の話を聞いた。又紫檀張りの幻灯機の話も聞いた。二枚折の屏風は明治天皇のまだ少年の頃の姿が描かれており、後ろには棚があり、その上に幻灯の機械が置かれてある絵であるとのことであった。

又紫檀張りのほうは、機械の外がわが全部美しい彫りのある紫檀の張られた幻灯とのことであった。欲しいとは思ったが、こういう上手の美術品には貧書生の私の手の出せる訳がないので、あきらめたとはいえ時々思い出す。

 これも同氏から聞いた話だが、氏がまだ子供の頃、近所に玩具の幻灯を持っている人がいて、ランプで写す幻灯会という遊びがあったとのことである。金色夜叉や不如帰などをやって、其の説明は昔の活弁口調で実に堂に入ったもので、見物人のお涙を頂戴したとのことであった。又当時相当にいかがわしいものもあって今日の十八才未満お断り式のものもあったとのことである。

 幻灯は現在も命脈を保ってはいるが、明治の幻灯は、明治の体臭をぷんぷんと発散させて吾々の心にしみてくれる。ごくありふれた東京の名所にしても、大正大震災に次ぐ昭和の大空襲で、今を昔に返すよしもないが、幻灯板には昔の明治がまざまざと残っている。

その幻灯種板もいまはめったにお目にかかれない。そんなつもりで蒐集したのではないが、今では全く高価で、大事な民族資料になってしまったのに私自身驚いているものである。                                         完

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